歯内療法
歯内療法
虫歯が進行し、歯のシンケイ(歯髄)まで達してしまった場合でも、安易に歯を抜くのではなく、歯の内側にある神経の管を適切に処置することで、ご自身の歯をできるだけ永く使い続けられるように導く治療法です。当院では、この「歯の内側」という肉眼では見えない微細な領域に対し、高度な設備と技術を用いて精密なアプローチを行っています。
歯内療法には、歯の状態に合わせて大きく分けて3つの段階があります。
虫歯が神経の近くまで達していても、可能な限り神経を残すための治療です。神経を保存することで、歯に栄養が行き渡り、歯の寿命を延ばすことにつながります。
神経が死んでしまったり、感染が起きたりした場合に行う治療です。歯の内側の環境を整え、土台としての健康を取り戻すことで、抜歯を回避し歯を機能させます。
通常の根管治療だけでは治癒が難しい場合、歯ぐき側から微小な手術を行うことで、原因となっている根の先の問題を取り除き、歯を保存する最終的な手段です。
参考文献
日本歯内療法学会 編「歯内療法ガイドライン」
日本歯科保存学会 編「う蝕治療ガイドライン」
American Association of Endodontists “Glossary of Endodontic Terms”
歯髄(しずい)とは、一般的に「歯のシンケイ」と呼ばれる組織のことです。
歯の最も中心部にあり、象牙質に囲まれた「歯髄腔(しずいくう)」という空間に収まっています。単なる神経だけでなく、血管やリンパ管、細胞(象牙芽細胞など)が密集した軟らかい組織です。歯髄の役割は以下の通りです。
栄養供給: 血管を通じて酸素や栄養を象牙質に届け、歯の強度と弾力を保ちます。
感覚の伝達: 虫歯や刺激を「痛み」として脳に伝え、歯の異常を知らせるセンサーの役割を果たします。
防御反応: 刺激を受けると「第二象牙質(修復象牙質)」を作って厚みを増し、外部の刺激から歯の内側を守ろうとします。
虫歯が深く、強い痛みがある場合に歯髄を除去することを「抜髄」といいます。
メリット: 最大級の苦痛である「虫歯の痛み」から解放されます。デメリット: 痛みというセンサーと栄養供給を失うため、歯が脆くなり、「歯の寿命」が短くなる原因になり得ます。
一方で、MTAセメント等の材料とマイクロスコープの活用により、従来なら抜髄していたケースでも神経を残せる可能性(VPT)が広がっています。
メリット: 歯の免疫機能と感覚を維持し、歯の寿命を延ばします。
デメリット: 成功率は100%ではなく、適応できるケースも限られます。術後の慎重な経過観察が欠かせません。
本歯科医院での方針
『まずは歯髄の保存。それがダメなら最善の根管治療』
抜髄には「痛みからの解放」という、何物にも代えがたい大きなメリットがあります。一方で、神経を失った歯は「痛み」というセンサーを失い、栄養供給が止まって脆くなり、結果として寿命を大きく縮めてしまうという深刻なデメリットも抱えています。。
『一度失ったシンケイは戻らない。シンケイがある方が歯の寿命は伸びる。でも痛みの原因になったら除去しなければならない。残したいけど残せない時もある』という葛藤を、私は臨床の現場で幾度となく経験しました。その中で「まずは残せる可能性に全力を尽くし、それでもダメなら最善の根管治療を行う」という段階を踏むこと、それを患者さんに確実に説明することが重要であるという”結論”に至りました。
必要であるならばもちろん抜髄処置を速やかに行いますが、まずは歯髄の保存を考慮します。
根管治療(根の治療)の大きな目的は、「悪くなった歯を可能な限り抜かずに、長く使い続けられる状態に整えること」にあります。
歯の痛みや腫れを引き起こしているのは、根っこの中に入り込んだ「細菌」です。
この細菌を丁寧に取り除き、再び入り込まないように精密な処置を施すことで、お口の健康を土台から立て直していきます。
「歯の基礎工事」とお考えください
どんなに立派な被せ物をしても、土台となる根っこが不安定では長持ちしません。当院では、患者さんの大切な歯を1本でも多く残せるよう、この「土台作り」を大切にしています。

大学病院勤務時代、他院で根管治療がうまくいかなかった患者様を多く診てきました。そこで得た教訓は「根の治療に近道はなく、時間をかけて丁寧に処置を行う」ことの重要性でした。「根の中に異物が入ってしまった」「この歯を残せるかどうかわからない」といった理由が主なものでしたが、そうした患者様の多くは、時間をかけ注意深く治療することで改善に向かいました。
大学病院という、一人一人の患者さんにじっくりと向き合える環境だったからこそ、その丁寧な処置が結果として良好な結果に結びつく可能性が高いことを学ぶことができました。
だからこそ当院では、私の診療姿勢の根幹として以下の環境を整えています。
歯内治療の三種の神器
最近の歯内治療において『三種の神器』は以下の3つが挙げられます



根管治療(歯の神経の掃除)において、「ロータリーファイル」は治療の成功率を劇的に向上させた道具です。そもそも『ファイル』とは、根管治療(歯の根の治療)において歯の内部の汚れ(細菌や腐敗した神経など)を掻き取るヤスリのような器具です。歯のシンケイの除去をされた方にはお分かりかもしれませんが、歯科医師が指先で歯の中をグリグリ擦るあの道具です。
ロータリーファイルは、専用の電動機器(エンドモーター)で回転させて使うタイプのファイルです。
従来のファイルはステンレス製です。切削効率は高いものの、エンドモーターでは器具の破断の可能性があるため使用は手用に限られていました。特に曲がった歯の根の治療においては治療の難易度は著しく上昇します。
これに対しロータリーファイルはニッケルチタン合金で作られています。
ニッケルチタン合金の特徴
前述した、歯科用CT(根管の状況の精査が可能)、マイクロスコープ(術中の拡大視野が得られる)と合わせ、NiTiロータリーファイルは精密・丁寧な歯内治療には必要不可欠です。
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